2
side.綾
都築は変なやつだ。
怒りもしないし、嫌そうな顔もしない。
普通こんな面倒くさいやつが上がり込んできたら、もっとこう、対応するんじゃないか。
いたけりゃいればいい、出て行きたけりゃ行けばいい。
その距離感が、心地いいんだ。
「よっ……と」
器用に歩いて、寝室に向かった。
リビングにいても暇だし、ベッドでごろごろしたい。
寝室には都築が好きなのか、色んな本が置いてある。
(なんか、読も)
適当に本棚から数冊取って、ベッドに寝転んだ。
ぱらぱらと、読む。
開かれた窓からは柔らかい日差しと、涼しい風が舞い込んでくる。
カーテンがさらさらと、フローリングに揺れた。
(……なんつーか)
ひどく、優しい時間。
こんなに穏やかな時間があったのかと、驚くくらいに。
(やばいな、これ)
少し昔の自分を思い出して、そっと、目を閉じた。
前へ top 次へ