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「どこ、行くの」
「え、大学」
「……大学生だったんだ」



朝、身支度をしていると桜木が目を覚ました。
ひょこひょこと足を引きずってリビングに来ては、ソファに黙って座り込む。
けれど警戒心は未だ解かず、牽制する様子が伺えた。



「夕方には帰ってくるけど。……ま、適当にしとけば」



出て行きたければ出て行けばいいし、さして盗られる物などもない。
桜木はじっと俺を見つめたまま、黙っていた。



「じゃ」
「……飯は」
「……お前さぁ、」
「お腹すいた」



本当、こいつは何と言うか。
図々しいというか人懐っこいというか。



「あー……冷蔵庫にあるもん、勝手に食っていいから」



横暴な居候に強く言えないのは俺のせい。
こういうとこ、人に付け込まれやすい。
良く言えば面倒見がよくて、悪く言えば面倒くさがり。



「冷凍庫の奥の、ハーゲンダッツ食べてい?」
「いつの間にっ……」



ぬかりないやつ。



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