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「……寝てんじゃねーよ」



朝倉を帰して寝室に戻ると、桜木はすやすやと眠っていた。
寝ていれば悪態も強腰な態度もなく、可愛いもんなのに。

ベッドの足元、端に座る距離までしか近付けない。
それ以上だと桜木はあからさまに怯えてみせるから。
ベッドの頭側に寄って布団を握り締めるのはいつものこと、2mしか近付けないのに、今は違う。



(何なんだよ、手前は)



寝息をたてる桜木の頭を、そっと撫でた。
無防備な寝顔に、いつもとは違う安らぎが伺えて、少しだけほっとした。

中途半端に扱う気はない。
桜木の足が癒えるまでは、それなりに世話をしてやるつもりでいる。
面倒なやつだからといって今更放り投げる気は、毛頭なかった。



(でも、なあ……)



桜木の警戒心、みたいなものが引っ掛かる。
こっちも気にしてしまうし、桜木も気が張っては疲れてしまうだろう。

この小さい身体に何を背負っているのか、気にならない訳では、ない。



「ん……」



首にうっすらと見える、絞められたような痣。
お前一体どうやって生きてきたんだと、寝ながらも目尻に涙を浮かす桜木を、ただ見つめることしかできなかった。



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