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side.綾



思い出すのは、身体に近づく熱。

鎖骨に押し付けられる痛み。
ひきつる皮膚の感覚。
近付く、笑い声。



「っ……」
「……ちょ、おい、待て」



込み上げる吐き気に口元を押さえると、身体が持ち上がった。
洗面所へと連れていかれ、言葉なく吐いた。



「けほ、っ……うっ」
「……顔色わる」
「うっ、かは……っ」



お前のせいだ、という言葉さえ出なかった。
ひとしきり吐くと、また肩を掴まれた。
抱き上げようとする動きと、指の間に挟まれた煙草に、俺は男を突き飛ばした。



「な、」
「来るなっ……」



怖い、怖い、怖い。

傷の残る胸元をぎゅっと握り締めた。
一生消えない、傷。



「来る、な……」
「……あ」



気付かれた、かもしれない。
男ははっとした表情をみせて、煙草を灰皿に押しつけた。

ゆっくりと近付いて、また肩を掴まれた。



「っ……」
「震えてんぞ」
「るさい……」



また抱えあげられた。



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