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side.若葉



「……別に、言いたかったら、言えば」



徹平さんはぶっきらぼうにそう言った。

他の大人と違った。
高校に入学して、すぐに家を出なくなった僕に、学校の先生や友達、お母さんは理由を問い詰めてきた。
理由を言うのが怖かったし、言いたくなかったし、問われることは苦痛だった。

徹平さんだけが、違った。
事実だけを受け入れてくれた。



「……ひ、人が、怖いんです、」
「あ?」
「前から、ひ、人に、じろじろ見られてて……高校、入ってから、それがひどくなって、写真っ……とか、撮られたり、して」
「………」
「いつも、み、見られてる、から、怖くて」



言うと、思ったより心がすっきりした。
気付いたら喉がカラカラになっていて、少しぬるくなったホットミルクを飲んだ。

徹平さんは黙ったまま、僕の頭を撫でてくれた。



「帰るか」
「え、っ……わ!」



ばさっと毛布をかけられて、また同じように肩に担がれる。



「翼、ごちそうさん。次につけといて」
「了解です、また来てくださいねー。弟ちゃんも!」



店員さんの声だけが聞こえて、返事もままならずに、こくりと頷いた。
徹平さんが少しだけ笑った気がした。



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