5
side.若葉
「わ、可愛らしい顔してますねー」
「っ……」
金髪の知り合いらしい店員が、僕を見てにっこり笑った。
目の前には甘い匂いを漂わせているホットミルク。
前髪を掴んだままの、金髪。
「翼、髪のピン貸せ」
「え、あ、どうぞ」
「ほら、前髪邪魔だろーが」
金髪が僕の前髪を弄った。
久しぶりに視界がクリアになって、落ちつかない。
「あう、」
「飲め」
「あ……あの、ええと、」
名前がわからないや。
それに気付いたのか、金髪は煙草を灰皿に押しつけながら、
「……徹平」
「え、えと、徹平、さん」
「さん、か。普通は弟になんて呼ばせんだ?」
徹平さん、が店員さんに笑って問いかけてた。
その顔は、目つきの悪さとはかけ離れた、人懐っこいもので。
少しだけ、写真の中でしかしらない、お父さんに似てると思った。
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