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side.若葉
……最悪だ。
最悪なやつが、やってきた。
「お前が、俺の弟になるやつ?」
突然目の前に現れたのは、金髪の目つきの悪い男だった。
くわえ煙草のその男は、部屋のベッドの上でうずくまる僕を、上から見下ろした。
「っ……だ、誰、ですかっ」
「若葉、先週から言ってたでしょう?新しくお兄さんになる人よー」
後ろからお母さんがにこやかに答える。
その隣には、最近知った、次のお父さんになる(予定)の男の人。
僕のお父さんは、僕が小さい時に死んだ。
記憶はないから、悲しみはあまりなかった。
最近になって、お母さんが再婚を考えだした。
再婚を前提とした、同棲を始めるらしかった。
僕には関係のない話だと思ってた。
何故なら僕は―――引きこもりだから。
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