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side.徹平
時間も遅くなってきたし、翼のからかいもヒートアップしてきたところで、帰宅することにした。
「じゃ」
「おごちそうさまでした」
若葉はご丁寧にも、ぺこりと頭を下げていく。
翼も応えるようにカウンターから出てきて、若葉の目の前までやってくる。
「また来てね」
少し屈んだかと思うと、若葉の頬に、キスを一つ。
「えっ……えぇぇっ、なっ、なにっ……!」
「翼ぁっ!」
……止める間もなかった。
帰り際で油断もしていた。
「あはっ!それじゃっ」
翼は逃げるようにカウンターの奥に行ってしまった。
俺は茫然としている若葉の手を引いて、店の外に出た。
「ったくあいつ……!」
「んぐっ」
店を出て早々、若葉の頬を袖でごしごしと擦った。
若葉はまだ高校生のガキだ、いらんことを教え込まれたら困る。
……自分が高校生のときは、どうだったかは置いといて。
「若葉、お前あいつと二人っきりになるんじゃねぇぞ」
「え、え」
家に帰ったら消毒させようと思いながら、帰路に着く。
若葉は少しずつ克服はしているけれど、やはり一人で歩くのは怖いらしい。
今も控えめに俺の後ろから着いてきて、裾を掴んでいる。
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