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side.稚早



流れる涙を、拭ってやることも出来ない。
恐怖に震える身体を、抱き締めてやることも出来ない。

自分の無力さに、拳を握った。



「ん、何が怖い?」



優しく問うと、歩は浮かされたように、すべてを話した。

頭が冷えるようだった。
怒りで、狂いそうだった。



「お、おれ、」



汚いだろ、と震えた声で歩が呟く。

もう何も考えずに、俺の唇で、歩の言葉を塞いだ。



「っ……!ぅ、」
「……汚いわけ、あるか」



歩が驚いたように、目を見開いた。



「汚くなんかない。あゆは、汚れてない。あゆがどんなでも、俺はあゆが、好きだよ」
「っ……」
「あゆが嫌なこと、怖いことは、絶対にしない」



伝われ、とじっと歩の目を見て言葉を紡いだ。
歩は少しだけかたまって、そしておずおずと、腕を伸ばしてきた。



「あゆむ……?」



首に巻き付かれて、きゅっと、抱きつかれる。
その細い腕は幽かに震えていたけれど、確かな力があって。



「……ぎゅってしてもいい?」



聞くと、返事の代わりに、歩の腕の力が強くなった。

俺はそっと、歩の小さな身体を、抱き締めた。



「……あった、かい……」
「ん、あゆの匂いがする」
「っ……」
「……泣かないで」



やっと、触れられた。



「っ……すき……」
「俺も、大好きだよ」



やっと、届いた。



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