5
side.稚早
飛び出してくるトラックを見て、咄嗟に腕を引いた。
ぼんやりとしたまま後ろに下がった歩は、次の瞬間にはがくがくと震え始めた。
「あゆ?」
「や、やっ……!」
頭を抱えて、その場に座り込んでしまう。
いつもの強気さとは違う、恐れを滲ませた声。
ふっ、と糸が切れたように、歩は意識を失った。
「………」
そこから近かった俺の部屋に連れてきた。
歩は眉間に皺をよせて、ベッドに横たわっていた。
何が、起きたんだろう。
何を、抱えてるんだろう。
トラックがきて、驚いた?
いや、違う。
あの眼は。
俺が、腕を、引いたから。
「あゆ……」
単に、べたべたするのが嫌いなだけだと思っていた。
さばさばした性格だし、そういうことは恥ずかしがりそうだから、強要する気もなかった。
違う、と今気づいた。
そんなんじゃない。
触れられることが、怖いんだ。
でも、どうして、
「っ……ぅ、」
「あゆ、」
歩が少し唸って、ぱっと目を開けた。
はっ、はっ、と息が荒い。
「あゆ、大丈夫?わかる?倒れたんだよ」
「……ち、はや……」
「ん、なに」
ぽろ、と歩が泣いた。
あの歩が、泣いた。
「こわ、い……っ」
小さな声は、誰のもの?
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