4
 

あの日のことを知ったとき、稚早は離れていくだろうか。
俺の事を汚いと、軽蔑するだろうか。



「あゆ?」



なんで、あんなこと起きたんだろう。
そうじゃなかったら今頃、俺は普通に生活出来てたのに。



「あゆ、どうしたの」



俺は、どうして、あの日の夜、



「あゆ、っ!」



キキィッと、甲高い音と、稚早の声ではっとした。
目の前の信号は赤、俺は数歩飛び出していて、



「危なっ……」



ぐん、と腕を引かれる感覚。

俺が今しがた立っていたところに、トラックが走って行った。
ぞくり、と背筋が凍ったのは、命の危機を感じただけではない。



腕を引かれる。
連れ込まれる。
泣き叫んでも、口を塞がれて。
気づいたら、暗闇の中。

知らない声と、臭いと。
気持ち悪い、息遣い。
痛みと、苦しさと。
突き立てられる、感覚。



「ひっ……!」



俺は、あの日、犯された。



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