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side.稚早
しばらくすると、歩の過呼吸は落ち着いてきた。
けれど、
「あゆ……?」
「っ……く、ぅ」
あゆが、
あゆが、泣いてる。
「どうしたの、びっくりした?どっか苦しい?」
「ひ、っく……ぅ、っ」
「ね、あゆ、泣かないで」
涙を拭ってもやれない。
「っ……なんで、俺……」
ぽつりと溢れた、あゆの本音。
昔の夢でも見たのだろうか。
ぎり、と唇を噛み締めた。
「あゆ、顔あげて」
「っ、」
「歩」
「……っ?」
涙でぐしゃぐしゃな歩と、目が合った。
そらさずにじっと見つめる。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、目線を反らさないまま歩の頬に触れた。
ぴく、と震えた歩の身体は、けれど拒絶はしなくて。
「俺が、ずっとあゆの傍にいる」
目線を反らさない。
歩も、反らさなかった。
そっと近付いて、触れるだけのキスをした。
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