3
 

side.稚早



「ごめんねー」
「……なんで稚早が謝んの」



またベッドに逆戻り。
微熱とはいえ、事実上一人暮らしの歩の家に、帰すわけにいかない。



「薬のんだから眠いでしょ。また起こすから、ね?」
「……ん、」



熱があるせいかな、なんだか素直。
もぞ、と横向きに踞って、歩が口を開いた。



「ち、ちはや、」
「うん?」
「ごめん……あ、ありがとう」
「……可愛い恋人のためならなーんだってしますよ!」



唯一触れる手に、そっと触れた。
俺のより小さなそれを軽く撫でる。

すぅ、と歩は眠ってしまった。



―――夕方になろうとしていた。

帰りが遅くなるという親の連絡をうけて、今日の晩ご飯は何にしようか考えていたとき。



「……ぅ」



静かな寝息をたてていた歩が声をあげた。



「っは、……っ、ぅ」
「あゆ?」



寝言とは違うそれ。
近付くと、歩はぎゅうっと布団を握りしめていて。
苦しそうに眉間に皺をよせて、空気を喘いでいた。



「は……っはあ、っぁ、」



過呼吸だ、と気付くには容易く、急いで袋を持ってくる。
なるべく肌に触れないようにして、



「あゆ、大丈夫だからね、ゆっくり息して」
「っん、はあっ……はっ、」
「あゆ、」



背中も擦ってやれないのがもどかしい。



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