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side.稚早
(……まー可愛いこと……)
ふわふわ、と猫っ毛を撫でた。
土曜日の朝。
昨晩から我が家に、可愛い可愛い恋人が泊まりにきている。
もう昼前で、親は仕事に行ってしまった。
「……んぅ……」
むにゃ、と恋人―――歩が寝がえりを打つ。
ぎゅーってしたい!
ぷるぷるしながら、我慢する。
ベッドの横に正座しながら、拳を握る。
歩は、人に触れられることが苦手だ。
もちろん、触れることも苦手。
昔のトラウマのせい。
最近はやっと、手を繋げるくらいにはなってきた。
だからこうして、いつも神経をピリピリさせて厳しい顔をしている歩が、俺の隣で無防備に寝てるだけで嬉しい。
寝てるときだけ、起こさないように、頭を撫でることができる。
「う………?」
「あ、起きた?おはよ、あゆ」
ぱっと歩の頭から手を話す。
にっこり笑うと、歩が覚醒してきて、目が合った。
「わ、わあああああっ!」
大きい声をあげて、歩が飛び起きた。
「なん、ばかっ、いきなり目の前っ」
「ごめん、びっくりしたー?早く目ぇ覚めたからあゆの寝顔見てたー」
そう、もちろん俺と歩は寝床は別。
ベッドは歩に譲って、俺はソファで寝ていたのだ。
歩が驚くのも無理はない。
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