6
いらないは、きらい。
いるは、なに?
「寒くない?」
言いながら、頬を撫でられた。
よいしょ、と身体を反転させられて、男の方を向かされる。
目が、合った。
きれいな、目。
「……やっと、見えた」
男は嬉しそうに笑う。
僕は、目を伏せる。
きゅ、と背中に腕が回った。
「ねぇ、瑠依」
心地いい、声。
「嫌いなものも、好きなものも、たくさん教えてね」
いらないは、きらい。
いるは、すき?
きれいな、目。
心地いい、声。
優しい、腕。
僕を、傷付けないもの。
「……き、」
嗚呼、やっぱり。
声は掠れてしまうけれど。
僕を、傷付けない、もの。
僕が、好きなもの。
なくならないように、きゅっと、目の前のシャツを掴んだ。
前へ top 次へ