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目を覚ますとそこは、知らない場所だった。
温かい布団がうっとうしい。
僕は身体を起こして、ベッドから出る。
僕は、大きなシャツを着ていた。
手は袖に隠れてみえないし、裾は膝まである。
ベッドと、本棚と、小さな机。
それから、空を写す窓に、閉じられたドア。
ぺたりと、フローリングに寝そべる。
ひんやりとした感触が頬に伝わって、僕は安心する。
ふと、目の前のドアが開いた。
「………瑠依、」
茶色のスリッパが見える。
それが近づいて、僕の目の前にやってくる。
首の後ろに手が入って、ふわりと身体が浮いた。
ベッドに横たえられて、布団を首まで丁寧にかけられる。
「おやすみ、瑠依」
男はそう言って、頭を撫でた。
ぼんやりと天井を見つめていると、隣に気配がした。
ベッドを背もたれに、床に男が座っていた。
僕は首を少しだけ動かして、初めて男を目に写した。
横顔にかかる、焦げ茶色の髪の毛。
耳に光る、小さなピアス。
ふと、男が僕の方を向いた。
一瞬間があって、にこりと笑った。
僕は、目をそらした。
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