3
side.航
奈津を落ち着かせて、俺は一時部屋を出た。
予想通り部屋の入り口付近で、春川がうろうろしていた。
「……何うろついてんの」
「たっ、高梨!ごめん、俺、謝らなきゃって」
「や、いいよ」
後ろ手にドアを閉めて、廊下で立ち話。
「えっと……さっきの、さ」
「ん」
「噂の、こいびと?」
「じゃなきゃんなことしないだろ!」
「ああ、ごめん」
そう。
俺は嬉しさのあまり、可愛いこいびとが出来たと仲間に言いふらしていたのだ。
それが同じクラスの浅井奈津とは言っていないけれど。
「ま……お前が自惚れんのもわかるわ」
「は?」
「すっげえ可愛い。どこのクラス?」
空気をぶち壊しにしたことを微塵も悪く思っていないのか、春川が目を輝かせていた。
春川とは中学からの仲だ。
こいつ自身も同じクラスの男と付き合っていて、偏見なんてもんはない。
……春川なら、いいか?
「あんま、話広めんなよ」
「当たり前だろ」
「……信用ねえ」
「ひど!」
そして俺は、話始めた。
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