1
「良かったな、満月先生風邪治って」
「うん」
「奈津も元気になるしな」
「え?」
帰宅して、今日は航の部屋に来ていた。
最近はお互いの部屋を日替わりで行ったりしてる。
教室で授業を受けていない僕にとって、航と会える貴重な時間。
「あれ?気付いてない?満月先生いない間、元気なかったよ」
「………」
「妬けるー妬けるわ」
そういって航は頬を膨らませて、テレビ画面を見ながらゲームのコントローラーを動かした。
(気付かなかった……)
同時に、申し訳ない気持ち。
(えと、)
(ちゃんと、言わなきゃ)
「こ、航」
「んー?」
ゲームをしていて目が合っていないのは、僕にとって幸いだった。
「僕が好きなのは、航、だけだよ……?」
「………」
がしゃん、とコントローラーが落ちた。
前へ top 次へ