5
 

side.航



「……うれ、しい」



奈津がぎゅ、とシャツを握りしめてきた。



「え?」
「かぎ、……ありがとう」



ちらりと顔を見るが、胸元に顔を埋められ、窺い知れなかった。
見えたのは、少し赤くなった頬。



「どういたしまして」
「……ね、航」
「ん?」



ふいに奈津が顔をあげ、目があった。
真っ白な肌に、蒸気した頬。
大きな黒い目と、薄く形のいい唇。
その唇が、微かに微笑みを作って。



「……だいすき、」
「っ……」



奈津の、ばか。



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