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「自分に自信もて、とか言わない」
「………」
「ただ、俺は絶対に奈津の傍にいる、から。だから、不安になんないで」
「……ん、」
じわり。
温かいものが満たされる感じ。
不安も、哀しみも。
(航なら)
忘れさせてくれるのかも。
「あ、そだ」
「?」
ごそごそと、航がポケットから何かを取り出した。
銀色に光る、鍵。
「これ……」
「俺の部屋の合鍵。いつでも来てよ」
「………」
鍵を手渡され、ぎゅっと握った。
鍵は僕にとって、恐ろしいものの一つだった。
父親が取り出した鍵は、僕をあの世界に閉じ込めた。
同時に鍵を使って玄関が開くと、父親が嫌な笑い方をして近付いてきた。
僕を閉じ込める、鍵。
恐怖が近付く、鍵。
でも、今は違う。
僕にとってこの鍵は。
「奈津?何泣いて、」
「っ……、ふ」
「………」
航は何もいわずに、抱き締めてくれた。
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