4
side.航
「……う、航?」
高いところから落ちる感覚がした。
びくっ、と目を開けると、奈津が心配そうな顔で見降ろしていた。
「ど、したの……?」
「っ……は、はぁっ、はっ……」
息がうまく整わない。
俺はベッドで寝ていたらしく、覆い被さるように、奈津が上に乗っていた。
「うなされてた……」
す、と手を伸ばして、額の汗をぬぐってくれた。
シャツの中も汗びっしょりだ。
夢だった。
奈津が―――いなくなる夢。
「怖いゆめ、みたの?」
「ん……や、大丈夫」
身体を起こして、息を整える。
ベランダの向こうは、綺麗な晴れだった。
同じ光景にびくりとするけれど、今は違う。
心配そうに、眉を下げて見てくる奈津。
寝起きなのか、頬がほんのり赤い。
少しだけ開いた口も。
濡れたような睫毛も。
今は何もかもが愛しい。
「こ、う……?」
たまらなくなって、抱き締めた。
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