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side.航



「散歩にでも行く?」



よく晴れた日。
外は綺麗な青空で、俺は奈津を誘った。



「……うん」



個室の病室で、ベッドに上半身を起こしていた奈津は、読んでいた本をパタンと閉じた。
ふわ、と笑ってベッドから足を下ろす。



「あ、待って、車いす借りてくる」



まだ足腰が弱くて、長時間自分で歩くことができない。
それでも俺が散歩に誘ったのは、閉じこもっているだけではなく、外の空気を吸わせてあげたいと思ったから。

今日は、ひどく暖かい。



「……っ?」



ナースステーションから車いすを借りようと、病室を出ようとした瞬間だった。

がたんっ、と大きな音。
振り返った病室、ベッドの上に、奈津の姿はなかった。



「奈津っ」



ベッドの下に、倒れ込んだまま。
奈津はぴくりとも動かなかった。



「奈津、奈津っ……誰か、っ」



ベッドの上のナースコールを押す。
抱き上げると、すっかりやせ細ってしまった奈津は、弱弱しく息をしていて。
うっすらと開いた目に、俺の姿が映った。



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