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side.航



「まっ……」



ドアに手をかけたところで、奈津が小さく叫んだ。
振り向かないまま、足を止める。



「な、で……」
「……俺、言わなかった?」



一人で、闘わないで。



「奈津のこと、迷惑だなんて、思ったことないって」
「……!」
「顔見たらわかる、奈津は俺のこと、信じてくれてない」



ぐっ、とドアを開けようとすると、それは、聞こえた。



「いかな、で……っ」



ほら。
やっと、言ってくれた。



「おねが、ひとり、しなっ……やだ、いかないで、やだぁっ……」



振り向くと、奈津はぼろぼろと泣いていた。

欲しかった言葉。
我慢なんてしなくていい。
叶えられるかはわからないけれど、一人で、泣かないでほしい。

せめて、俺の胸のなかで。



「こ、こう、やだ、」
「よく言えました」



近くによって、ぎゅっと、抱き締めた。
奈津はすがるように、俺にしがみついた。

小さな小さな身体。
それが全部、俺にむいてる。
俺だけを、必要としてくれてる。



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