5
side.航
「次の授業、サボっちゃおうか」
「っえ」
「奈津が甘えてくれるの、嬉しーんだもん」
同じ歳とは思えないほど、小さな身体。
俺の腕の中にすっぽり入るそれを、いつまでも感じていたくて。
「航、」
あの、と奈津が続けた。
不安に、なったんだと。
違う世界にいるんじゃないかと。
自分以外の奴と笑ってる俺に、離れていかないでと、思ったのだと。
「なっ……」
「わがままっ、だよ、ね」
「……もーなんなの、可愛い……」
ちゅっ、とキスした。
奈津はびっくりしてしまっている。
「わかる?俺、うれしいの」
「うれしい……?」
「そんだけ奈津が、俺のこと好きって思ってくれたってことでしょ?他の奴のとこなんて行くわけない、こんなに奈津が好きなんだから」
奈津がまた、ぎゅうっと抱き締めてくれた。
その途端に、予鈴がなった。
「あ………」
「このまま、やすんじゃお」
「え、駄目っ、授業」
「いーの!次の授業皆川せんせーだから。先生、奈津には弱いんだよ?」
「……?」
奈津はきょとん、としたまま。
次の授業が皆川先生なんてのは、嘘。
俺がもっと、奈津とくっついていたいから。
他のとこなんて、行かない。
他のやつには、渡さない。
奈津だけ、だから。
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