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わがままなんだろうか。
「僕だけを見てて」と思うのは。
「寒くなかった?」
「ん、だいじょうぶ」
体育が終わって、航が更衣室から着替えて出てきた。
自然に僕の隣に来て、一緒に歩いてくれる。
「ほら、手冷たい」
「っ……」
きゅっと手を繋がれる。
信じていいよね?
その笑顔は、僕の物だって。
「もう昼休みだし、屋上行こ」
今日は、いい天気だ。
教室に戻って、航がお昼ご飯を持ってきた。
僕のごはんは、満月先生が用意してくれたサンドイッチ。
これでも、お腹いっぱいになっちゃうんだけど。
「んー!いい天気!」
僕と航の、お気に入りの場所。
屋上にある、非常用階段を登ったもっと上。
視界が開けたその小さなスペースに、誰も気づくことはない。
そう、誰も。
僕と航以外。
「奈津?お腹すいてない?」
固まったままの僕の顔を覗き込んで、航がにこりと笑った。
胸が、きゅうっとなる。
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