1
 

あれから僕は、少しずつ教室に行けるようになった。

自習とか、昼休みとかだけだけど。
授業みたいに囲まれた逃げられない場所にいるのは、まだ辛かった。

それでも、前に進んでるって、航や先生が褒めてくれた。



「高梨!パス!」
「よっしゃ!」



今は、体育の時間。
体育館でのバスケ。

体育館なんて、初めてきた。
僕は制服姿のまま、隅っこで座っていた。



「あっ……」



航が、ボールをもって、シュートした。
わぁっと周りで歓声があがる。

チームの人に航がわしゃわしゃと頭を撫でられていた。
いい笑顔、してる。



「奈津ーっ!」
「あ、」



航がふとこっちを見て、ぶんぶん手を振ってくれた。
僕も振ると、駆け寄ってきてくれた。



「見てたっ?俺のシュート!」
「うん、すごいね」
「だろー」



自慢げに話す航は、子どもみたいで。



「高梨ー次始まる!」
「今行くー!」



またね、と一つ頭を撫でて、航は行ってしまった。

航と同じ場所にいられるようになったのは、嬉しかった。
でも、思い知らされる。

僕と航は、違う世界の人なんだって。



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -