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「じしん……」
「そ!今日ここまで一人で来れたのもすごいし、自信持っていいんだよ?」
僕が大好きな笑顔を浮かべて、航が言う。
航が喜んでくれるなら、僕は、いくらでも頑張れる。
僕に出来るのは、これくらいしかないけど。
「あの、あのね、僕……褒められるの、嬉しいけど……」
「うん?」
「僕はいつも、航に、色々してもらってるから……その、自分で頑張ってみたくて……」
ああ、もう。
うまく、言えないや。
「航のために、航がいるから、頑張れたんだよ……?」
「………あーっ!」
「!?」
「どうした高梨!」
航が突然顔を覆って叫んだから、びっくりしてしまった。
「あーもう、やばい、俺絶対顔赤い……」
「っえ、」
「すげー嬉しい……ぎゅうってしたい、ちゅーしたい……」
「え、っええ!?」
「公共の場だから抑えろな」
「うう……」
ちら、と航と目が合った。
「昼飯、今日は屋上で食べよ。人いないし」
「え、え……?」
「ぎゅうってしてちゅーしてやる……」
「なっ……!」
「早く昼休みならねーかな……」
春川くんが呆れたように、でも可笑しそうに、笑った。
僕もきっと顔が真っ赤だっただろうけど、うれしくて、笑った。
光、みたいなのが。
一緒な感じがして。
普通の「こうこうせい」が、少しだけだけど、できた気がして。
嬉しかった。
僕もいつか、同じ場所にいられるように。
航がいるなら、頑張れる。
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