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「浅井、これあげるー」
「わ、わっ」
隣にいた人が、飴をずいっと差し出した。
慌てていたらにこりと笑われたから、そっと、受け取った。
「あり、がと……」
「いーえー」
「宮田、俺にも」
「高梨にはさっきやっただろ」
わいわい。
がやがや。
僕の、知らない世界だ。
「高梨、この漢字何て読むの?」
「国語の課題?……えーと、」
国語、のプリントみたい。
授業を受けてない僕にとっては、真新しいものばかり。
「……わかんね。調べろ」
「高梨つかえねー」
「……かぐわしい……?」
「っ……え」
プリントにある漢字は、本で見たことあるやつで。
思わずぽつりとつぶやくと、航がぱあっと笑顔になった。
「すごい、奈津。やっぱ本とかいっぱい読んでるからかな」
「芳しい、ね!浅井かしこい!」
「あ、う、」
航が頭を撫でてくれた。
……褒められた、みたい。
「奈津は覚えんの早いからなー勉強したら俺よか頭良さそう」
「頭、良くないよ……」
「奈津は自分に自信持たなきゃ駄目!」
むぎゅう、と頬っぺたを摘まれた。
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