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side.航
「奈津、どしたの、っわーびっくりした」
「がっこ、あの……頑張って、」
わたわたしてるのを見ると、やや緊張しているようで。
さすがにキス……は出来ないから、頭を撫でた。
「自習、って……皆川先生から、聞いて」
「一人で来たの」
「ん……あ、あのね、座る……教室の、」
俺にとっては当たり前のことでも、奈津にとっては、難しい。
ここにくるまできっと、すごく頑張ったんだろうな。
少しずつ、前に進んでる。
「うん、奈津の席は、俺の隣」
「ん……」
いつ教室にきてもいいように、皆川先生の配慮。
奈津の微かに震える手を引いて、席に向かう。
「ここだよ」
「浅井おはよー!」
「春川、くん……おはよう、」
ちょこん、と座り慣れてない様子で奈津は座った。
周りのクラスメイトも、ちらちらと見ている。
奈津とは文化祭に会ったきりだから、仕方ないかもしれない。
けれど初対面とかじゃないから、悪意は感じられなかった。
「自習、なに、」
「ん?俺は世界史の課題」
「俺は数学ー国語もあるんだけど、浅井やる?」
「お前何言ってんだよっ!」
ぺし、と春川の頭を叩くと、奈津が少しだけ笑った。
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