2
side.航
「あー眠い……」
「高梨さっさと課題やれよー」
「んー……」
授業中、俺は机にへばりついていた。
先生の出張が入ったこの時間は自習になっていて、溜めっぱなしの課題を片付けているところ。
後ろから同じく課題をしている春川が、うるさく声をかけてきた。
「こんな溜めたのが馬鹿だったよなー」
「………」
「高梨きいてる?」
「………」
「ねぇって、」
「っだー!俺は集中してんの!お前うるさい!」
「ひでー!」
課題を溜めたら、自ずと奈津と会う時間だって減ってしまう。
だから今のうちに、片付けてしまいたい。
「………」
「………」
「たっ……たか、高梨っ」
「………」
「高梨ってば!」
春川が背中をばしばし叩いてきた。
「なんだよ!俺集中してるって、」
「違うって、あさ、浅井、がっ」
「へ、」
春川が教室の後ろドアを指差しながらびっくりしていた。
元々騒がしかった教室も、ざわざわが大きくなっている。
「な……つ……?」
「あ……」
ドアに半分隠れるように、奈津が顔を出していた。
俺はびっくりして、思わず駆け寄ってしまった。
授業中で人通りがないとはいえ、一人で、教室にくるなんて。
前へ top 次へ