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side.航
「……奈津、見してみ」
「う……」
「怒んないから」
奈津の隣に座ると、おずおずとタオルケットを広げた。
「にゃー」
タオルケットと同じくらい、白いねこ。
赤ちゃんではないけど成人でもない、子どもかな。
「どしたの、これ」
「……寮の、入り口に」
「拾ったの、」
「だっ……一人、でっ、鳴いて、」
きゅっ、と奈津がねこを抱き締めた。
泣きそうな顔してる。
「……んー」
「す、捨てっ……」
「寮、ペット駄目だしなあ……」
「だめーっ!」
まだ捨てるっていってない、と言葉を紡ぐ前に、奈津はわんわん泣き出してしまった。
「だめっ……ねこ、ひとりっ……だめ……っ」
「泣くな、大丈夫、捨てたりしないよ」
「ふ、ぅっ、ほんと、っ?」
「ほんと。奈津は優しいね」
慰めるように抱き締めて背中を撫でると、何もわかってない様子のねこが、無邪気に鳴いた。
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