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side.航
最近、奈津の様子がおかしい。
「……あ」
一緒に帰って、寮部屋の前。
いつもだったらどっちかの部屋に流れ込む。
いつも、だったら。
「っ、僕、」
「今日も駄目?」
「……だめ」
奈津は真っ直ぐ部屋に帰るようになった。
理由を聞いても、頑として答えてくれない。
……なんかしたかな、俺。
「奈津の部屋が駄目なら、俺んとこは?」
「………」
「……もちょっと、一緒いたい」
「……うん」
微かに頬を赤くして、ちょっとだけ、と奈津は俺の部屋に入ってきた。
嫌われたわけでは、ないのかな。
座って、のんびり。
奈津は保健室でもだったけど、なんだか眠たそうだ。
「眠い?寝てていーよ」
「でも、」
「夜になるまでには起こすし」
「ん……ごめん、ね……」
こてんとベッドに横になると、すぐに寝息が聞こえた。
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