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航が、キスしてくれた。
軽いのをいくつかと、段々それが、深くなる。



「んぅ……ん、ぁ」
「かわいー」
「は、ぅ……」



苦しくなってきゅっとシャツを掴むと、顔が離れた。
頭を撫でられながら、航がぽつりとつぶやいた。



「花火、外に見に行かなくて良かったかも」
「……?」
「外だったらこんな、いちゃいちゃ出来なかったし」
「……っ」



いたずらっ子みたいに、航が笑う。
出会った時から変わらない、優しい顔。
最初は怖かったけど、なんだか安心して、仲良くなれたんだっけ。



「……奈津?」



こてん、と航の肩に頭を預けた。
花火は最初よりも増えて、どんどん高い空に上がってる。
綺麗だなぁ、と思いながら。



「また来年も、一緒に、」
「……うん」
「っ……その次も、」
「うん」
「その、次の、次も」
「うん。ずっと」



いつの日か、また同じ景色を見られる。
そう思うと、儚く消えていく花火に、切なさは感じなかった。



「次はさ、手持ち花火しよ」
「手っ……!?」
「ああ、違う!あんなおっきい花火じゃなくてー」



……まだまだ、知らないことばっかりだ。
一緒に、見つけていこう。



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