8
side.航
何を否定的になってたんだろうと、馬鹿馬鹿しくなった。
こんなに、愛おしいと思うのに。
「ね、」
「?」
「一個だけ、俺のお願い聞いて?」
「?……なに……?」
身体を離して、奈津と目が合う。
ベランダから入り込む花火の光で、顔が照らされてた。
「奈津から、ちゅーして欲しいなぁ」
「っ……!?」
ぼ、っと顔が赤くなる。
キスよりもすごいことしてるのに、いちいち反応が初々しい。
「な、なっ……」
「ね?」
「う……」
おずおずと顔が近づく。
かわいいなぁ。
「めっ、目、瞑って」
「えー顔みたい」
「っ……だめ、瞑って……」
そりゃ、譲歩してやります。
苦笑して、素直に目を瞑ってやると、手を重ねられるのを感じた。
ふわり、奈津の匂い。
「ん、」
「……終わり、っ」
ちゅ、と重なる程度のやつ。
それだけで十分だ。
褒めるように頭を撫でて、次はこっちから。
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