6
花火……初めて見た。
きらきらしてて、綺麗。
音は大きくてびっくりしたけど、もう平気だ。
「みんな、部屋から見てるのかな」
「あー……うーん」
「どうやって、ばーんて、してるんだろ」
「えーっと……」
「どうやって、色つけるのかなあ……」
周りの世界は、知らないことでいっぱいだ。
隣から航が、頭を撫でてきた。
「……?」
「わからないこと、いっぱいだもんな」
「?……うん」
「俺も、わかんないこといっぱい。だから、一緒に色んなもの見て行こ」
ずっと一緒に、と航が柔らかく笑った。
さっきより、元気になったみたいだ。
花火見たからかなぁ。
「花火あるから、外にいっぱいお店できるの。今日だけね。綿菓子とかかき氷とか売ってあって」
「おみせ……」
「いつか、一緒に行こうな」
……いつか。
いつかって、いつになるんだろう。
外を見ると、人がたくさんいる。
あんな場所に、今の僕が行けるわけない。
……いつかって、いつ?
「でね、食べ物だけじゃなくて金魚とかー」
「……航」
「うん?」
「本当、は……お店とか、行きたかった……?」
僕はいつも思う。
僕のせいで、航が窮屈な思いをしてるんじゃないかって。
普通のことを、普通にできない、僕のせいで。
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