5
 

side.航



「航……」
「ここにいるよ、大丈夫」
「うん……」



俺がいいと言って、俺を頼ってくれる。
そんな奈津を、もっと大切にしたい。
もっと、楽しませてあげたい。

煩わしさがないわけではない。
でも、それがなんだって言うんだろう。
奈津の苦しみに比べたら、そんなこと。



「怖くないよ、手、とってみ?」
「うん……」
「で、こっち。移動するよ」
「え、」



ひょい、と奈津を抱え上げて、ベランダの方へ。
花火が空に打ち上がっていた。
ちょっと丘になった土地のてっぺんにある寮だ、三階のここからでも割と良く花火は見えた。



「わ、わぁ……」
「あれがね、花火。きれいでしょ」
「きれい……」



床にペタリと座って、奈津は花火を見上げた。
恐怖心はなくなったわけじゃないのか、時折びくびくしてる。



「先に花火あるって、教えてれば良かった。ごめんな」
「……ううん」



奈津がきゅっと、手を握ってきた。
言葉にできない思いを、伝えてくれた気がした。



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