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side.航



「あ、始まっ、」



くるりと奈津を振り向くと、



「や、やっ……」
「っ奈津、」



耳を塞いで奈津が怯えていた。
反射的にそのまま抱き締めて、背中を擦った。



「や、なに、怖っ……」



何に怯えているのかと思えば、どうやら打ち上げられる花火の音。
正直戸惑いながら、奈津に話かけた。



「大丈夫、花火だよ。お祭りの」
「なに、はなび、っ……?」



目に涙が浮かんでいた。
そんなに、何で怖がるのか。



「………もしかして、花火見たことない……?」



幼い頃から監禁され、解放されても入院生活をしていた奈津だ、花火を直に見たことがないのも頷ける。
奈津の身体が、震えていた。



「はなび……わかんな、っ、音、が……」
「びっくりしちゃった?怖くないよ」
「う、」



必死に俺にしがみつく奈津の頭を、優しく撫でてやる。

奈津だって好きで怯えてるわけじゃない。
今までの狭い世界から出て、色んなものを知って、戸惑いだって多いはず。
それでも、前を向くために、知るために。
俺たちにとっては当たり前の事実でさえ、奈津には驚きで、恐怖にもなる。

わかってた、つもりになってた。



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