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触られないのと、執拗に話し掛けられないのとで、案外僕は大丈夫だった。
航もいるし、満月先生も、皆川先生も来てくれた。
僕達の向かい側にあるソファに座った。
「保健室じゃあれだし、ここでご飯食べましょ。はい、皆川先生」
「俺が払うのかよ!」
「担任でしょう?」
しぶしぶ皆川先生が、メニューを借りて何か頼んでいた。
喫茶店がさらに騒がしくなったところを見ると、先生たち、人気者みたい。
「皆川先生……似合う」
「嬉しかねーよ。なんでこんな……」
「照れてる?」
「違えよ!」
航の誉め言葉に、皆川先生が恥ずかしがったのがわかる。
満月先生もおかしそうに笑っていた。
……二人、仲良いなあ。
しあわせだなあ、と思った。
わいわいした教室。
同じクラスの子と、同じ時間に、同じ場所にいる。
それだけで、嬉しくなった。
「航、」
「ん?」
「あのね、っ」
航が、いてくれたから。
僕は、しあわせだ。
「だいすき、だよ……っ」
ずっとそばにいたい。
ずっとそばにいてほしい。
航が好きで、好きで。
溢れるような気持ちで、満たされた。
初めての気持ちだった。
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