3
side.航
奈津を見て教室中がざわめくのがわかった。
お姫さまだっこをしたまま、ソファに座る。
あんま見せたくない……と思いながら、俺のこいびとだと自慢したくなる。
奈津は俺の膝に座りながら、アンティークな喫茶店の様相をしている教室を、キョロキョロと見渡していた。
「浅井、よろしくなー」
「よろしくー!」
「へ、ぁっ」
クラスメイトが奈津に声をかけてくれた。
約束は守って、少し離れたところから。
他人から話し掛けられて怖がらせたかなと思いきや、
「うん……っ」
精一杯にそう言って、少しだけ嬉しそうに笑った。
「大丈夫そう?」
「ん……」
耳打ちすると、奈津も俺の耳元で告げた。
「航がいるから、大丈夫、だよ」
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