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「……航?」
「あ、ごめん」
僕の手を撫でながら、何か航が考え込んでいた。
「航も、何か、着る?」
「俺?着るよ、女装じゃなくて普通のだけど」
ウェイターするんだ、と言って笑った。
ウェイター、が何かよくわからないけれど、航も一緒なら、何でも出来る気がした。
「あー……奈津かわいいだろうな」
「っ……」
「俺がウェイターでいつも奈津の隣にいるようにするから、心配するなよ」
さらさらと、髪を撫でられた。
航は、優しい。
僕のことを、考えてくれる。
狭い世界にいたせいで、勉強もろくにできないし、知識もない。
人と触れ合うことさえ、苦手な僕だけれど。
航の隣にいる資格だけは、
「……ちゅーしてい?」
「へ、」
「しちゃお」
航の腕の中にいる、権利だけは、
どうか、奪わないで。
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