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side.航
『困りましたねえ』
「え」
『甘えん坊さんを通り越して、幼児退行してますね』
満月先生に電話する傍ら、奈津は俺の隣に座って首を傾げていた。
満月先生の話によると、強いストレスで幼くなってしまうとのこと。
お父さんが亡くなった精神的なショックとストレスが、奈津を退行させたのではないか、との事だった。
「え、俺、どうすれば」
『薬で治るとかいうものじゃないですからねぇ。自然と治るのを待つしかないです』
「そんな、」
言葉を紡ぐ前に、奈津の泣き声が遮った。
ぐすぐすと目を擦っている。
「あー……また掛け直します」
一方的に電話を切って、奈津の頭を撫でてやった。
「どうした?」
「ふぇ、っ」
きゅっ、と服の裾を掴んできた。
何かぐっときた。
幼くなった奈津はそりゃあ可愛くて。
俺大丈夫かよと思うくらいに。
でも不安に揺れる目だとか。
必死に掴む手だとか。
幼い奈津には縋る術がなくて。
あ、俺だけなんだなって。
「そんな、不安そうな顔しないで」
「こ、こぉ」
「俺がいるから、な?」
一人じゃないよ、
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