5
「奈津、疲れただろ。ゆっくり休みな」
「……ん」
お通夜、お葬式。
喪主は満月先生がしてくれた。
僕は人前に出られないから奥にいて、それでもいつも以上に人と接したから、気疲れしていた。
制服を脱ぎながら航が、僕に声をかけた。
上着とネクタイを取って、僕はソファに蹲った。
(あの人が、)
死んだだなんて。
夢に現れることも、声が聞こえることも、もう、ないんだろうか。
そう思うとほっとしたような、でもなんだか、
「……こう、」
「うん?」
「……ぎゅって、して、?」
哀しい、
航がソファの隣に座って、抱き締めてくれた。
ぽん、と頭を撫でられた。
航の匂いは安心して、温かくて、ほっとする。
「もう、泣いていいよ、」
「っ!……う、」
欲しかった、言葉。
「ほんとは、我慢してたんだよな」
「うぇ、っ、ふ……っ」
わあ、と航の胸の中で泣いた。
さようなら、
たった一人の、お父さん。
前へ top 次へ