3
「……奈津」
「お、とう、さん」
にこりと、微笑む40代ほどの男。
お父さんは、前よりもずいぶん小さく、線が細く感じた。
個室の奥、白いベッドに横たわって上半身だけ起こしていた。
「……無理して近付かなくていい。そこの椅子を使いなさい」
「………」
ドア付近で躊躇っていた僕を見越してか、お父さんが優しく言った。
僕は言われたまま、傍らにあった椅子に座った。
身体が固いのがわかった。
握った拳が、思わず震えた。
「……大きく、なったな」
ぽつり、一言。
僕は俯いたまま。
「悪かったと、思っている。許して欲しいとも。しかし、許されないことをしたと、」
「ちがっ……」
思わず口を出してしまった。
顔を上げると、お父さんが驚いた顔をして僕を見ていた。
「奈津?」
「ちがっ、あの、僕は、」
「ゆっくりでいい、落ち着いて」
その言い方が、満月先生にひどく似ていた。
僕は頑張って一つ深呼吸をして、言葉を紡いだ。
伝えたいことが、
あなたが、死ぬ前に、
「僕、は……怒ってない、」
「……」
「憎んでも、ない……ただ、僕は、違うくて」
お父さん、あなたに
「愛され、たかった」
伝えたかった。
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