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side.航



『愛されたかった、』



そう言って、小さな身体を震わせて、奈津は泣いた。

どうしてこんなにも、この親子はすれ違うんだろうと思った。

虐げられても、父親の愛を求める奈津。
虐げて、奈津からの解放を乞う父親。



(なんなんだよ、)



なんて、不器用。



「ただ、普通に。普通に名前を呼んで、普通に生活できれば、それでよかった」



歪んだ、親子。



「許すなんて。許してしまえば、愛してくれる?」
「………」

「許してしまえば、あの人の中から僕はいなくなる」



ただ名前を呼んで。
抱き締めるだけでいい。

歪んだこの親子は、それすらできない。



「奈津、それじゃあ」
「……」
「愛してほしい、って。言えばいいんじゃないの」
「……拒絶、されたら」
「……ばかだなあ」



震える肩に触れて、そっと頬にキスをした。



「拒絶するわけない。だって奈津の『お父さん』だから」



奈津が父親に会うと決めたのは、この日から3日後。
夏休みに入ったばかりの、快晴の日だった。



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