5
 

ぴり、とあっけなく封筒は破れた。
中には一枚の、薄っぺらい紙。
さほど多くない、黒い文字。

ベッドの上で航が僕を後ろから抱き締めて、肩に頭を乗せられた。
大丈夫、っていうみたいに。
一人じゃない、っていうみたいに。

僕は、手紙を読む。



『奈津へ

私がしたことを、お前は許してくれるだろうか。
ただ、今は一言だけ謝りたい。
ごめん。
父さんはもうすぐこの世からいなくなる。
その前に伝えておきたかった。
お前は父さんを憎んでいるかもしれない。
でも父さんを許してくれるなら、最後にもう一度、会いたい。』



「こ、う」
「ん」



ぽたり、と涙が手紙に落ちた。



「どう、しよう」
「何が?」
「いっぱい、どうしよう、僕、わかんな、っ」



声が震えた。



「ごめん、って」
「ん」
「会いたい、って」
「……ん」
「違う、僕が、欲しいのは」
「え?」



たった一人の、あなたに。



「愛されたかった、」



謝罪なんていらない。
憎んでなんかいない。

僕が求めたのは、そんなもんじゃない。

ただ、お父さん。
あのね、



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -