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優しく、されていたはずだ。
父親、だったはずだ。
確かに、僕の唯一の、親。
「わか、ない」
でも、僕には
「どうしたら、いいのか」
わからないから。
「奈津、これを」
「……?」
茶色の素っ気ない封筒。
そこにあるのは見慣れない、『浅井奈津様』という文字。
「お父様から、預かりました」
「……!」
「中に入院先の病院の住所が書かれています」
震える手で、それを掴んだ。
「奈津が決めなさい、どうするのか」
握りしめて、くしゃりと、封筒が歪んだ。
(おとう、さん、が)
(僕に手紙、)
開けられなかった。
開けられないまま、保健室を出て、部屋に帰った。
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