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「あれ?いねえの?」
「………」
訪問者が去ろうとした、そのときだった。
がしゃんと大きな音をたてて、机に置いたコントローラーが床に落ちた。
ばれた。
空気がひやりとした。
まだ息をひそめながら、ドアの向こうを伺った。
「………浅井?」
「っえ……」
突然名前を呼ばれて、思わず声が出た。
口をふさぐけれど、もう遅い。
「えと、高梨、今いない?」
「え……っいな、い」
「そっか。……ゲーム返してもらう約束だったんだけどな」
僕はぴんときた。
先日、貸してもらったやつだ。
二人で大分すすめて、面白いから買おうか航が悩んでいたのを覚えている。
「いないならいーや。よかったら、一言言っといて」
「あ、待っ……」
「え?」
思わず呼び止めた。
ゲームを返してもらいにきたから、返さなくちゃ。
「あ、の……ゲーム、ありがと、っ」
「え、うわ」
ケースに入れたゲームを片手に、そっとドアを開けた。
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