5
 

side.航



「んーっ……」



一つ、伸び。

明日提出の課題がやっと終わったのは、日付が変わってからだった。
今までやらずに溜め込んだ自分を恨んだ。

デスクから腰をあげてベッドに潜り込み、電気を消そうとしたところで、



「………?」



携帯が鳴った。

こんな時間に誰だ?とディスプレイを見ると『奈津』の文字。
心臓が、跳ね上がった。



「もしもし?」
『……航、』



消え入りそうな、不安そうな声。



「ん、どした?」
『あの、あのね、』
「ん」



『たす、……けて……っ』



携帯を切らないまま、俺は部屋を出た。
周りに気付かれないようにそっと廊下を歩いて、奈津から貰ったスペアキーで部屋に入った。

ぺたりと、床に座った奈津がいた。
右手には携帯電話と、血だらけの左手と、苦しそうな顔。



「もう、泣いていいよ」



頭を抱えるようにして抱き締めると、ごとんと奈津が携帯を落とした。



「航っ……ごめ、僕っ」
「奈津?何で謝んの?」
「ぼく、めいわっ……かけて、っ」
「俺、迷惑とか一言も言ってない」



頭を撫でて少し離れて、寮の部屋に備え付けてある救急箱を持ってきた。
満月先生を真似て、手当てをしてやった。
床のそれも綺麗にして、呆然としたままの奈津をまた抱き締めてやった。



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