3
side.満月
「最近、何かありましたね」
奈津が眠ってしまってから、俺は高梨に聞いた。
「1週間くらい前、俺の友達とばったり会って、それで」
「……奈津には外部の人間はまだ刺激が強かったみたいですね」
なるべく責めるように聞こえないよう、優しく高梨に言った。
高梨は申し訳なさそうに、膝の上で拳を握った。
奈津はここ数日、目に見えて体調が悪かった。
少し痩せたようだし、高梨と俺がいないところで自傷もしているようだった。
最近は少なかったのに。
「とにかく、今奈津はすごく不安定です。薬も増やしてますけど、あまり目を離してやらないで下さいね」
「………ん」
まだ高校生の高梨には、あまりに責任が重すぎるのではないかと思ったことは、一度だけではない。
けれど奈津が高梨を選び、高梨もそれを受け入れたのだから―――それを引き裂く理由はどこにもなくて。
(それに、)
俺にも奈津以外に、大切な人とかいうものが、できたようだから。
前へ top 次へ