6
side.航
「奈津?……っ、!」
部屋に戻ると、奈津がうつむいたまま座っていた。
様子がおかしいと思ったら、自分の左腕を爪で引っ掻いていた。
「奈津、やめな、落ち着け」
「っ……こ、う……」
そのまま頭を抱えてやると、奈津のくぐもった声が俺の名前を呼んだ。
抱き返しては、くれなかった。
「ごめ……ごめんなさ、」
「ん、いいよ」
奈津が自傷行為をするのは、不安の現れだ。
ずっと一人にしていたからだろうか。
「と、もだち……は……?」
「春川?もう帰ったよ、ゲーム貸してくれた」
「まだ、話してて、いーよ……」
「………奈津?」
なんかおかしい。
「友達……と、遊んできて、っ……僕、帰るし、」
「なんで?……俺は奈津といたいんだけど」
「だっ……て、」
奈津は、抱き返して、くれない。
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